ビーツは、実は冬の野菜です。

沖縄というと一年中あたたかいイメージがあるかもしれませんが、だからこそ畑には畑のカレンダーがあります。

種をまくのは、台風が落ち着いてから

沖縄でビーツの種をまくのは、9月ごろです。

理由はひとつ。台風です。

夏の沖縄は台風が繰り返し通ります。芽が出たばかりの畑は、風と塩にとても弱い。だから農家さんは、台風のピークが過ぎるのを待ってから種をまきます。

そこから涼しくなっていく時期に育って、冬から春にかけて収穫を迎えます。

「沖縄の野菜」と聞くと夏を思い浮かべる方が多いのですが、ビーツにとっては冬こそが本番です。

サンゴ礁が、島になって、土になった

沖縄の土は、本土とは成り立ちがまるで違います。

沖縄本島の多くの土地は、大昔のサンゴ礁が長い年月をかけて隆起してできた「琉球石灰岩」の大地です。海の中でサンゴが積み重なってできた地層が、そのまま島になった。つまりこの島の足元には、サンゴの記憶が眠っています。

この琉球石灰岩からできた土は、カルシウムなどのミネラルを含み、中性〜弱アルカリ性という個性があります。

じつはこれが、ビーツと相性がいいのです。ビーツは酸性の土が苦手な野菜で、中性に近い土でよく育ちます。日本の畑の多くは火山灰土壌や雨の影響で酸性に傾きやすいので、本土でビーツを育てるには石灰をまいて土を整えるところから始まります。沖縄の土は、その点で最初からビーツを迎える準備ができている土なのです。

ビーツは、育った土の個性がそのまま味に出る野菜だと言われます。サンゴの記憶が残るこの土で育ったビーツを、私たちは使っています。

大事なのは、作物より「土」

私たちの契約農家では、農薬・化学肥料・除草剤を使っていません。

ただ、これは「ビーツに薬をかけていません」という話ではありません。大事なのは、その手前にある土のほうです。

作物は、土から育ちます。だから私たちが見ているのは、そこがどんな土か

この畑は、これまで一度もそうした薬剤を入れたことのない土です。ビーツを植えている期間だけの話ではなく、年間を通して、畑ぜんぶがそうです。「栽培期間中は不使用」という表示をよく見かけますが、そこよりもう一歩手前——土そのものを、ずっと薬に触れさせずにきた畑ということです。

一度入れたものは、土の中にしばらく残ります。だからこそ、使わずに積み重ねてきた年月そのものが、この畑の価値だと思っています。

そして、こうした土づくりを続けるのは、とても手間がかかります。

いちばん大変なのが草です。

種をまく前なら、機械で土ごと起こして草を片づけられます。けれど種をまいたあとの畑には、機械は入れません。芽を傷つけてしまうからです。

つまり、そこから収穫までのあいだに生えてくる草は、人の手で抜いていくことになります。沖縄の気候では草の勢いが強く、少し目を離すとすぐに畑が緑に覆われます。この繰り返しは、想像していただける以上に根気のいる作業です。

虫も同じです。薬に頼らないぶん、こまめに畑を見て回って、手をかけて向き合っています。

とれる量は、年によって変わります

もうひとつ、正直にお伝えしておきたいことがあります。

化学肥料を使わない畑は、収穫量がとても不安定です。

化学肥料は、作物に必要な栄養をすばやく、狙った量だけ届けられるものです。それを使わないということは、その年の土の力と天候に、収穫をゆだねるということでもあります。台風が来れば畑ごと変わりますし、同じ畑で同じように育てても、去年と今年で採れる量が違います。

だから私たちは、いつでも好きなだけ商品をつくれるわけではありません。品切れをお待たせしてしまうことがあるのも、ここに理由があります。

それでもこの畑を選んでいるのは、自分の子どもの口に入れてもいいか、というのが私たちの商品づくりの基準だからです。

有機JAS認証は取っていません

正直にお伝えしておきます。私たちは有機JASなどの認証は取得していません。

認証は取得と維持にコストがかかり、いまの規模では価格に跳ね返ってしまうからです。

その代わりに、やっていることが2つあります。

ひとつは、契約農家と直接取引をして、どの畑で採れたビーツなのかを把握していること。認証マークの代わりに、顔と畑が分かる関係でやっています。

もうひとつは、検査で確かめること。収穫したビーツを第三者の検査機関に出し、残留農薬検査(野菜160項目)を実施したところ、結果は160項目すべて「不検出」でした。畑で使っていないのだから当然——と言いたいところですが、数字で確かめられたときは、やっぱりうれしかったです。

私たちが値下げ交渉をしない理由

もうひとつ、決めていることがあります。

農家さんに値下げ交渉をしません。

日本全体で、農家は年々減っています。

つくる人が減れば、いずれ買う先がなくなります。安く買い叩くことは、その流れを速めるだけです。目先の原価が数円下がっても、5年後に畑がなくなっていたら意味がありません。

だから私たちは、提示された価格で買います。私たちの商品の価格には、畑が来年も続いていくための費用が入っています。ここは譲らずにやっていきます。

「GROWCIA」という社名のこと

私たちの会社の名前は GROWCIA(グロウシア) といいます。

grow ——植物が育つ、という意味を入れました。

それともうひとつ、働く女性の成長を応援したいという気持ちを込めています。

畑で野菜が育つことと、人が育っていくこと。私たちの中では、この2つは同じことです。だから値下げ交渉の話も、社名の話も、根っこはつながっています。

これからの季節

この記事を書いているのは8月の終わりです。もうすぐ、また種まきの季節がやってきます。

台風が過ぎたら、畑がはじまります。


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